最高水準の伝導度を示す新型プロトン伝導体を発見

東京工業大学理学院化学系の村上泰斗特任助教と八島正知教授(A02研究分担)らの研究グループが、中低温域で世界最高水準のプロトン(H+、水素イオン)伝導度を示す新材料Ba5Er2Al2ZrO13を発見しました。さらに新学術の国際活動支援を利用して、豪州原子力科学技術機構(ANSTO)のヘスター ジェームズ博士と共同で、中性子回折測定と結晶構造解析を行い、この新材料が示す高いプロトン伝導度の発現機構を明らかにしました。本プロトン伝導体にはO2の他にOHが存在し、広い意味で複合アニオン化合物であるとみなすことができます。特にOHの形成はプロトン伝導にとって重要となっています。

現在、実用化されている固体酸化物形燃料電池(SOFC)は動作温度が高いことが問題となっています。そこで低コスト化と用途拡大のために中低温域(300600℃)で高いプロトン伝導度を示す材料が求められています。従来の候補材料では、高い伝導度を実現するために化学置換が必要であり、安定性や高純度試料の合成に難がありました。今回発見した新型プロトン伝導体は化学置換無しで高いプロトン伝導度を示すことから、この問題とは無縁であり、新型プロトン伝導体およびその設計法として幅広い分野での応用が期待されます。

本研究成果は、2020515日にアメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」電子版に掲載されました。

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.0c02403
https://www.titech.ac.jp/news/2020/047117.html