代表挨拶

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領域代表 陰山 洋 
京都大学大学院工学研究科 教授

酸化物に代表される無機化合物は、触媒、電池、磁石、電子デバイスなど、我々の身の回りの広範な用途に用いられています。資源が乏しい我が国にとって、ものづくりは産業競争力の生命線であり、世界に対しその優位性を確保するためには、その源流である新物質の開拓を推進する必要があります。しかしながら、昨世紀までに膨大な数の無機化合物が報告されているものの、構造の基本ユニットである配位構造が限定されていることなどから、得られる機能には大きな制約がありました。

このような状況の中、21世紀に入って注目を集めているのが、物質中に酸素(O2–)、窒素(N3–)、水素(H)などのアニオン(陰イオン)が複数ふくまれる「複合アニオン化合物」です。酸窒化物(O2–/N3–)、酸水素化物(O2– /H)を初めとする複合アニオン化合物では、特異な局所構造が得られることなどから、様々な分野において根源的に異なる機能が発現する可能性が見えてきました。

しかしながら、複合アニオン化合物の研究に立ちはだかる大きな壁が三つあります。第一に合成技術がまだ確立されていないことです。酸化物の合成法の転用は殆どの場合通用しません。第二にアニオン解析技術を大きく発展させる必要があることです。例えば、標準的なX線回折では、酸素と窒素は区別できません。第三に、結晶・電子構造と機能の関係が殆どわかっていないため、機能の予測ができないことです。つまり、材料開発の核である「合成」、「解析」、「機能」のどれをとってもわからないことだらけです。したがって、合成、解析、機能が密接に連携した研究体制が必須となりますが、残念ながら現在の無機材料分野は出口によって細分化されているため、研究者間の交流は希薄でした。

本新学術領域では、異分野に属する研究者からなるオールジャパンの組織を構築し、各研究者が連携しながら、特色ある複合アニオン化合物を創製し、アニオン解析技術を開発し、革新的な機能性を創出することを目指します。5年間の研究を通じて、複合アニオン化合物の基礎学理を構築するとともに、革新的な化学・物理機能の芽を発掘し、将来の一般社会の要請に応える次世代材料として発展させたいと願っています。また、我が国が世界を牽引しながら、世界の研究者と共同研究ネットワークを構築し、次の世代を担う世界トップの人材を育成します。

最後に、複合アニオン化合物には、予想もしないような大きな驚きが眠っていると信じています。この領域(公募を含む)の学生を含む若手からシニアまでの研究者が、「なぜだろう?」という好奇心を大切(Curiosity-driven)にしながら、切磋琢磨していった先に画期的な発見が数多くうまれることを楽しみにしています。そのような雰囲気をつくれるように頑張ります!